裁定取引とは|アービトラージ(arbitrage)の仕組み

【空売り戦略の教科書⑬】裁定取引(アービトラージ-Arbitrage)とは?

裁定取引(アービトラージ)とは、同じ価値を持つ2つのものの「価格」や「金利」の差を利用して利益を得ることを目的とした取引のことです。

例えば、同じ銘柄の商品を東京取引所で200円、名古屋取引所で190円で取引価格が設定されている場合を考えます。この時、東京取引所で「売り」を入れて、名古屋取引所で「買い」を入れ、その価格差10円が利益となる手法です。

このように、市場の「価格の歪み」を見つけ、ローリスクで利ざやを稼ぐ手法を裁定取引といいます。裁定取引の大原則は「割高なものを売り、割安なものを買う」が基本的な考え方です

裁定取引の実例

2つの具体例から、裁定取引のイメージを掴んでいきましょう。

1.マーケットの歪みを見つける

6758/ソニーは、日本の東京証券取引所(6758:JP)と、アメリカのニューヨーク証券取引所(SNE:UD)の両方に上場しています。例えばマーケットが大暴落しているときに、ニューヨーク証券取引所で売買されているSNEの株価と、6758の株価に一時的な価格のズレが発生した場合に裁定取引のチャンスがあります。

例えば、SNEは6%の暴落に対して、6758の価格が理論値よりも4%しか下がらないと割り出されたときに、「SNEを買って、6758を売る」この価格差を利用して、ローリスクに利益を上げようとする取引となります。

2.需給の不均衡による「歪み」を見つける

金価格に連動するETFというのは、世界的に見てもたくさんの商品があります。例えば、以下の商品です。

  • GLD(SPDR ゴールド・シェア)
  • IAU(iシェアーズ ゴールド・トラスト)
  • 1540(純金上場信託)
  • 1328(金価格連動型上場投資信託)

株式市場は需要と供給がぶつかり合い株価が決定されます。そこに一時的な需要の不均衡により、同一の商品にも関わらず価格が離れることがあります。例えば、GLDが1.63%上昇しているのに対して、1540が2.68%上昇している場合、株価は理論値に収束すると仮定した場合、「GLDを買い、1540を売る」ことにより、市場の歪みからローリスクで利益を得られるチャンスが生まれるのです。

裁定取引のメリット

ローリスクな取引手法

裁定取引の1番のメリットは、価格変動リスクを負わずにローリスクで利ざやを稼ぐことです。

上記の例であれば、ソニーに突発的な悪いニュースがあった場合でも、売り買い両方のポジションがあるため株価が変動しても、その影響は相殺されます。

ボラティリティの低い相場でも利益を狙える

裁定取引は「価格差」を見つけることが、利益の源泉です。

現物取引で株を購入する場合、利益を得られるには株価が上がる必要があります。しかしながら裁定取引では、株価の変動が小さい相場でも「価格差」さえ見つけることができれば、利益を生み出すことができるのです。

いつどんな相場でも市場の歪みを見つけて、利益を狙うことができる取引手法であると言えます。

裁定取引のデメリット

潤沢な資金が必要

複数のマーケットに、いつでも売り買いできる資金を入れておかなければならないので、それなりに潤沢な資金が必要です。上記の例に沿って言えば、「GLDを買う資金」と、「1540を売る資金」の両方を準備しなければなりません。

裁定取引は基本的に、短期・中期の投資戦略です。いつチャンスが訪れても対応できるように、事前に資金を準備しなければならないため、資金効率が悪くなることも心得ておきましょう。

リターンが少ない

裁定取引とは理論上はローリスクで、利益を狙える取引ということになります。しかしながら、リスクが少ないということは、リターンも少ないということが言えます。

裁定取引での利益率は0.1%~5%程度と低く考えておくべきです。数千回、数万回の取引を経て、ローリスクでリターンを狙うことを目的としている取引ゆえに、主にヘッジファンドの手法として一般的に知られています。

しかし、ネット証券の時代で安い手数料により、個人投資家でもレバレッジを効かせて裁定取引を仕掛けやすい環境となっていることも確かです。

まとめ

裁定取引とは、空売りを使ったローリスクで着実に利益を狙えるトレード手法です。リスクが少ないゆえに利益も少ない取引手法です。

だからこそ、リスクを低く始めたい投資家にとっては検討するべき投資手法であると言えます。ぜひあなたも市場の「歪み」を見つけ出し、裁定取引を用いて安全に利益を稼げる投資家を目指してみましょう。

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