株の空売りは市場にとって善か悪か?空売りの役割と本質的価値

【空売り戦略の教科書⑪】株の空売りは市場にとって「悪」なのか?

投資の神様、ウォーレン・バフェットは空売りに対する見解として、このような意見を述べています。

「ショートセラーは誰もいない(多くの成功している投資家に)」
「米国をショートすると、常に負けてきた。これからもそうだ」

と強く指摘しています。世界有数の大富豪であり、伝説の投資家のウォーレン・バフェットが空売りに対してポジティブではない見解がみれらますが、果たして空売りとは社会的に「悪い」ことなのでしょうか。

ここでは、空売りの本質的な役割や道徳的な考え方について、簡単に言葉を用いて解説します。

なぜ空売りを非倫理的と考える人がいるのか?

さて、あなたは「人の成功を素直に喜べる人」と「人の失敗を喜ぶ人」のどちらに好意を抱きますか?答えは明確です。

これと同様の考えで、株式市場における空売りの考え方の一つに、会社の価値(株価)が下がることで利益を得るということは「不誠実」だと主張する方もいます。会社の業績悪化から利益を得るという貪欲なヘッジファンドのイメージから、空売りに対してネガティブな考えが広がったのは事実です。また、空売りは「損失が無限大」であり買いよりもリスクが高いという真実が、過大に宣伝されていることも空売りのイメージを悪化させる一つの要因の様です。

多くの投資家は、空売りに対して非倫理的な行為であり、リスクが高い手法であると考えています。しかし、本当に空売りは非論理的な手法なのでしょうか。

空売りが規制されるとどうなるの?

空売りができない世界

空売りができない世界での投資を考えていきます。

例えば、良い企業ニュースがあったとしましょう。一般的に株価は、将来の企業価値が上がると見越して上昇します。一旦上昇トレンドとなると、「押目待ちの押目なし」といった投資の格言からも分かるように、株価は上がる一方になり企業価値よりもさらに上昇してしまう現象が株式相場でよく起こります。

もしこの時、空売りできない世界であれば、株式を持っていない投資家からすれば、上昇した株を「買う」もしくは「買わない」という2つの選択しか残されていません。また、株価が本来の企業価値へ戻るため(下がるため)には、株式を持っている投資家が「売る」場合のみにより価格調整が行われるのです。この場合、投資家の買いが収まったところで、買い手が少なくなり、売り手が多くなるため、金融危機のような大暴落が始まることが想定されます。

空売りができる世界

一方、空売りができる世界では、株式を持っていない投資家による「買う」「買わない」「空売り」という3つの選択が可能となります。これにより、買い手と売り手の適度なバランスが保てたれ、過度な上昇を未然に防ぐことができます。以上から分かるように、「空売り」は非難されるものでないばかりか、市場効率性・安定性を高める役割があることが分かります。

一般的に、株価の上昇から利益を得る人々に何の問題もないのと同じように、株価の減少から利益を得る人々に、道徳的に悪いことは何もありません。

空売りの役割と社会的意義

言うまでもなく、株式市場は買い手だけで成り立っているわけではなく、売り手がいてこそ需要と供給のバランスが成り立ちます。買い手と売り手の両方、強気と弱気の両方、楽観と悲観がの両方が必要です。

株式市場をより効率的にするために、完全かつ適正価格を導き出すためにこそ「空売り」の役割があります。空売りのいない市場は、バブルを生み金融危機を引き起こす要因になりかねません。

需要と供給のバランスを適正に保つために、売り買いが自由に行える市場こそが、経済の最大の効率性を生み出すのではないでしょうか。

まとめ

以上のことから、空売りという投資戦略は「悪」ではないどころか、市場の効率性を最大化させる役割を持っていると言えます。買い手と売り手、このバランスが株式市場の効率性において重要です。金融危機を未然に防ぐためにも空売り投資家がマーケットには不可欠です。

会社の株価下落から利益を得たいのは「悪」だと主張する人もいるかもしれませんが、株価の下落で儲けることを狙う空売り投資家がいてこそ、自由なマーケットであると言えるのです。

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