売りヘッジとは|正しいヘッジ手法を初心者向けにわかりやすく解説

【空売り戦略の教科書⑯】売りヘッジとは?

保有している資産の価格変動リスクを回避する手段として「売りヘッジ」と呼ばれる手法を活用することができます。保有中の現物株の反対ポジションで「売りヘッジ」をとり、損失と利益を相殺することにより、現物株の価格を保全することができます。

ここでは、信用取引(空売り)を用いた売りヘッジ戦略の基礎を、初心者向けになるべく簡単な言葉を用いて解説していきます。ヘッジは危険な戦略ではなく、ヘッジをしないことの方が危険であることを理解していきましょう。

空売りを用いた3つの「売りヘッジ」手法

手法①:価格変動リスクをヘッジする

株価が大きく変動するイベントでの価格変動のリスクを「売りヘッジ」で回避することができます。

【株価が大きく変動するイベントの例】
米大統領選挙・日銀政策決定会合・アメリカ雇用統計・アメリカFOMC・ヨーロッパECB理事会・個別株の決算発表・政治や国際情勢など

例えば、ある企業の現物株2,000円を保有しており、直近で決算発表が控えている銘柄があったとします。この株券は長期的な目線で保有しているため決算発表前で売却しない考えですが、短期的に下降トレンドであるため株価の急落が心配です。

そこで1,000円分の「売りヘッジ」を仕掛けて、株価が大きく下に動いた場合でも、資産の目減りを軽減することができます。「売りヘッジ」で現物株の価格下落を警戒しながら、株価の上昇を狙うことができます。

手法②:株主優待のつなぎ売りでヘッジする

つなぎ売りとは、1つの銘柄に対して「買い」と「売り」を同時に同じ金額のポジションを持つことで、値下がりのリスクをヘッジする手法です。これにより株価が上昇しようが下落しようが、どちらでも損失を相殺することができるため、資産変動のリスクをゼロにしながら株式優待を獲得することができます。

例えば、株主優待を目当てに保有している現物株があるとします。しかし、相場の傾向として権利確定日を過ぎると株価が下落することがよくあります。そこで、この銘柄に対して「売りヘッジ」を仕掛けることにより、現物株で発生するを損失を、売りヘッジで発生する利益でゼロに相殺することが可能です。これを株主優待のつなぎ売り、または、クロス取引といわれる手法です。

手法③:ロングショート戦略(ペアトレード)

ロングショート戦略とは、ヘッジファンドが使う最も主流の戦略のひとつです。割安な株を買い(ロング)、割高な株を売る(ショート)。この買いと売りを同時に持つことで、どちらかのポジションがヘッジするという運用手法となります。

例えば、日本を代表する自動車メーカー「7203/トヨタ自動車」と「7267/ホンダ」を例に解説します。日本に上場する同じ業種の株式であるため、この2つの株価は通常、相関係数が高く値動きの推移も同じです。

直近でトヨタの株価は20%上昇しているのに対して、ホンダの株価は10%の上昇をしたとします。そんな時に、割高なトヨタを売り(ショート)、割安なホンダ(ロング)を買うのです。そして、この2銘柄が適正な価格になることで、利益を上げることができます。

この2つの銘柄が万が一暴落したとしても、暴騰したとしても、両社の株価は同じようなパーセンテージで推移することが想定できるため、リスクをなるべく抑えながら利益を目指すことができます。

「売りヘッジ」手法の注意点

売りヘッジを仕掛けるには、ヘッジにかかるコストである逆日歩や貸株料、配当落調整金をしっかり把握しておくことが大切です。

売りヘッジには、それなりのコストを支払う必要があります。コストも必要経費として事前に計算しておく必要があるので注意が必要です。空売りのコストに関する詳細記事はこちらでご確認下さい。

まとめ

売りヘッジとは、保有している資産の価値が目減りしないように、リスクを回避する投資手法です。

ヘッジはあくまでも将来の不確実性を取り除くために行うものであり、ヘッジで利益を上げようとする行為ではないことに注意してください。資産の目減りを防げることで、ヘッジは有効に働いたことになります。

これにより資産の減少を防げるほか、投資家の感情やセンチメントを安定させる働きもあることも、一つのメリットであると言えます。ぜひ、「売りヘッジ」を活用してパフォーマンスを最大に、リスクを最小に運用できる投資家を目指してましょう。

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