空売りで必要となるコスト|売買手数料・貸株料・品貸料・配当落調整金・信用管理費

【空売り戦略の教科書⑫】空売り取引で必要となる費用(コスト)とは?

投資の大原則「未来のことは誰にもわからない」。この言葉の通り投資に正解はなく、だれにも利益をコントロールすることはできません。

しかしながら、初心者でも上級者でも誰でもある程度コントロールできるのが「コスト」です。投資で成功を望むのであれば、利益を上げることを考える前に、費用を最小限に下げることが投資の王道であり鉄則といえます。空売り戦略でも、例外なくコストを最小に抑えることが、成功への近道といえます。

ここでは、空売りに必要な経費であるすべてのコストを、初心者に向けて分かりやすくご紹介していきます。また、ネット証券大手の「楽天証券」「SBI証券」の手数料を例に挙げ、手数料との上手な付き合い方もご紹介していきます。

空売り取引に必要な5つのコスト

空売り取引を行う際、株の購入とは異なる費用が発生します。取引の際に、以下の5つの費用を必要経費として見込むことが大切です。

  1. 売買手数料
  2. 貸株料
  3. 品貸料
  4. 配当落調整金
  5. 信用管理費
コスト①:売買手数料または信用取引手数料

売買手数料(信用取引手数料)とは、空売り取引を行う際に証券会社に支払う手数料のことです。証券会社によっては、売買委託手数料と呼ばれる場合もあります。

楽天証券・SBI証券の場合

1回の取引金額に応じて手数料が決まるプランでは、どちらの証券会社でも以下の売買手数料となります。

取引金額 売買手数料
10万円まで 99円(税込)
20万円まで 148円(税込)
50万円まで 198円(税込)
50万円超 385円(税込)

売買手数料は通常、現物取引よりも安く設定されている場合があります。例えば、LINE証券やSBIネオトレード証券(旧:ライブスター証券)、SMBC日興証券などの証券会社は、売買手数料が無料に設定されています。売買手数料だけに焦点を合わせれば、これらの証券会社を選択することも一つの案です。詳細は各証券会社のWebサイトで確かめてみましょう。

コスト②:貸株料

貸株料(かしかぶりょう)とは、証券会社から株を借りるために支払うレンタル費用のことで、空売り投資家が負担するコストになります。

貸株料の算出方法は以下の通りです。

貸株料 = (新規建て約定金額 × 金利 × 日数)÷ 365

楽天証券・SBI証券の場合

例えば、楽天証券・SBI証券の場合、一般信用取引「無期限」の貸株料は年率1.10%です。

約定代金10万円の空売りだと1日約3円((100,000 × 0.011 × 1 )÷ 365日 = 3.0137)のコストがかかります。

貸株料に関しては、どの証券会社も年率1.10%~1.15%と、ほぼ同じような水準です。しかしながら、貸株料年率2.00%のような証券会社もあるので注意が必要です。なるべくコストが必要となる証券会社は避けるようにしましょう。

コスト③:逆日歩(品貸料)

逆日歩(品貸料)とは、株を借りたときに支払わなければならない調達費用のことで、相場全体における空売りの総量により上下する追加コストです。

空売りをする際、投資家は証券会社から株式を借ります。市場における空売りの総量が大きく増加すると証券会社は、投資家に貸し出せる株がなくなります。証券会社は貸株不足になると、証券金融会社や機関投資家から株を調達することになりますが、この時に発生する株の調達コストを「逆日歩(ぎゃくひぶ)または品貸料(しながしりょう)」といい、空売りをする投資家が負担することになります。

空売りの総量が増加すれば、調達しなければならない株数も増加し、市場の状況に応じて証券金融会社が支払う金額を決定します。投資家側で管理できないコストです。

コスト④:配当落調整金

現物取引での配当金と同様にして、権利付最終日をまたいでポジションがあり、その銘柄に配当がある場合は、信用取引でも配当金を支払う義務が発生します。配当調整金とは、空売りの場合、配当金相当分として支払うべき金額のことです。

原則として配当支払開始日から1週間をめどに、現金保有残高から差し引かれるので、現金不足が発生しないよう余裕を持って入金しておくことが大切です。

コスト⑤:信用管理費(事務管理費)

信用管理費とは、信用取引にて買いポジション・売りポジションを保有してから1ヶ月を経過するごとにポジションに対して管理費が発生するコストのことです。

楽天証券・SBI証券の場合

1株あたり11銭(税込)、1ヶ月の上限は1,100円(税込)となっております。

まとめ

いかがでしたでしょうか?空売りを行う際には、現物取引とは異なる「目に見えないコスト」があることが分かります。

今回ご紹介した手数料は、比較的小さいコストのように思われがちですが、取引量が多くなれば軽視できない費用です。塵も積もれば山となるです。空売りに必要となるコストもしっかりと把握して、空売りで成果を上げられる投資家を目指していきましょう。

関連記事
【空売り戦略の教科書①】空売りとは?|ショートセール(short selling)の仕組み
【空売り戦略の教科書②】空売りの買い戻しとは?|ショートカバー(short covering)の仕組み
【空売り戦略の教科書③】空売り残高とは?|売り残(short interest)の仕組み
【空売り戦略の教科書④】空売り比率とは|空売り残高比率(short interest ratio)の仕組み
【空売り戦略の教科書⑤】初心者向け株式投資の空売りクイズ
【空売り戦略の教科書⑥】今さら聞けない「空売り」のメリット・デメリット
【空売り戦略の教科書⑦】初心者のためのやさしい空売り投資のはじめかた
【空売り戦略の教科書⑧】空売りで利益を出す考え方と売買のタイミング
【空売り戦略の教科書⑨】空売りは買いよりもリスクが高いのはなぜ?
【空売り戦略の教科書⑩】なぜ空売りをすると株価は下がるのか?
【空売り戦略の教科書⑪】株の空売りは市場にとって「悪」なのか?
【空売り戦略の教科書⑫】空売り取引で必要となる費用(コスト)とは?<< 現在こちら
【空売り戦略の教科書⑬】裁定取引(アービトラージ)とは?
【空売り戦略の教科書⑭】クロス取引(つなぎ売り)とは?
【空売り戦略の教科書⑮】現引き/現渡しとは?
【空売り戦略の教科書⑯】売りヘッジとは?
【空売り戦略の教科書⑰】制度信用取引と一般信用取引の違い
【空売り戦略の教科書⑱】空売りにおすすめのネット証券会社は?

\ ご支援ありがとうございます! /

関連記事

  1. 空売りの買い戻しとは|ショートカバー(short cover…

  2. 売りヘッジとは|正しいヘッジ手法を初心者向けにわかりやすく解…

  3. 空売りができるとどんなメリット・デメリットがある?

  4. 初心者のためのやさしい空売り投資のはじめかた

  5. 株の空売りは市場にとって善か悪か?空売りの役割と本質的価値

  6. 制度信用取引と一般信用取引の違いとメリット・デメリット

PAGE TOP