空売りができるとどんなメリット・デメリットがある?

【空売り戦略の教科書⑥】今さら聞けない「空売り」のメリット・デメリット

株式投資家にとって、今さら聞けない投資戦略「空売り」。よく耳にする手法の1つで、機関投資家向けの手法のイメージですが、実は詳しく知らないという投資家も多いのではないでしょうか。

ここでは、改めて「空売り」ができるようになると、投資戦略でどう活かせるのか、メリット・デメリットを簡単な言葉で解説します。

空売りのメリット

メリット①:下落相場でも利益が生まれる

株価は上昇相場と下落相場を繰り返します。もし、長期的な下落相場が続いた場合を考えてみましょう。

株の「買い」しかできない場合は、下落相場で利益を取ることは困難になります。そこで、株価が下がる時に「売り(空売り)」を仕掛けることができれば、利益を生み出しやすくなります。

「買い」と「売り」の両方を上手く使いこなせれば、実質的に利益が生まれるチャンスが2倍に増えます。

しかも、下落相場というのは基本的に短期決戦。「上げ100日、下げ3日」という投資の格言から分かる通り、株価の上昇に対して、株価の下落の期間は一瞬です。つまり、投資家にとって空売りという手法は、効率よく利益を出すことができる手法とされています。予測が当たれば、早く大きく利益が生まれます。

メリット②:リスクヘッジ(保険)ができる

ヘッジというのは、リスクを小さくする手法のことです。現物株を保有したまま株価の下落リスクを回避する手段として活用することもできます。

具体例を見ていきましょう。

例えば、保有している銘柄が買付単価1株1,000円で、現在の株価が1株1,500円という状況をイメージして下さい。現在の損益は+500円です。しかしながら、数週間後に保有株の決算発表があり、大きな値動きがあることが予測されています。

単純に保有銘柄を売って利益確定してもよいと考えられますが、長期的な保有でリターンを狙っている銘柄で手放したくない場合に、「売りヘッジ」という空売りを用いることで、利益を維持したまま株価の下落に備えることができます。

このケースでは、「売付単価1,500円で空売りする」ことにより、この後株価が下がっても、損益はプラスマイナスゼロにすることができます。株価の下落が落ち着いたところで、空売りを買い戻してヘッジを解消すれば、下落リスクを回避しながら長期的な保有をすることができます。

空売りの正しい活用法で、資産を保全することができる良い手法です。

メリット③:株式優待のクロス取引ができる

上記の「売りヘッジ」と考え方は同じですが、株式優待をほぼリスクなしで手に入れることも、空売りを用いて行うことができます。

株主優待を目当てに保有している現物株は、権利落ち日は株価が下落しやすいという傾向があります。

そこで、株価下落リスクを「売りヘッジ」しておき、株価が下落した後に買い戻しを行うのです。そうすることで空売りでは利益が得られ、現物株で発生した損失を補填することができます。

空売り保有による手数料を考慮しなければ、ほぼリスクなしで株式優待を手に入れることができます。

 

空売りのデメリット

続いては、空売りのリスクやデメリットについて考えていきましょう。

デメリット①:損失は無限大

空売りという手法は、自己資金以上に損失が生まれてしまう可能性があります。

株の「買い」の場合、株価はどれだけ下がっても0円までとなるので、損失は制限されます。例えば、1株1,000円の株価が、数日後に1株0円になったとしても、最大損失は1,000円で制限されます。

しかしながら、「空売り」の場合は、1株1,000円の株価が、数日後に1株2,000円となった場合、損失は2倍です。1株3,000円になった場合、損失は3倍にも膨れ上がります。もしくは1株10,000円(10倍)にもなる可能性があります。損失は青天井であり、これこそが空売りの最大のリスクということができます。

対策方法としては、損切ラインを事前に定めて、そのラインを越えたら自動的に「買い戻し」の設定を入れておきましょう。

デメリット②:空売り保有にはコストがかかる

「空売り」をする際は、証券会社から株券を借りることになります。その際にかかる手数料として、「貸株料(かしかぶりょう)」と「品貸料(逆日歩:ぎゃくひぶ)」があります。

貸株料

貸株料(かしかぶりょう)とは、証券会社から借りている株式にかかるレンタル費用のことです。

貸株料の算出方法は以下の通りです。

貸株料 = (新規建て約定金額 × 金利 × 日数)÷ 365

例えば、楽天証券の場合、貸株料は年率1.10%(2021年2月現在)です。約定代金100万円の空売りだと1日約30円((1,000,000 × 0.011 × 1 )÷ 365日 = 30.137)のコストがかかります。

逆日歩

逆日歩(ぎゃくひぶ)とは、株を借りたときに支払わなければならない調達費用のことで、一般的には品貸料とも呼ばれます。

空売りをする際、投資家は証券会社から株券を借ります。空売りの量が大きく増えると証券会社から、貸し出せる株が手元になくなり「貸株不足」という状態になります。証券会社は貸株不足になると、証券金融会社から株券を調達することになりますが、この時に発生する株の調達コストを逆日歩といい、空売りをする投資家が負担することになります。

注意点としては、空売りの量が増えれば増えるほど、調達しなければならない株数が増えるので、逆日歩の支払う金額も必要に応じて上下します。

 

まとめ

空売りを初めてする際には、空売りならではの手数料やコストがかかることも覚悟しなければなりません。また、空売りの最も注意すべき点として損失は「無限に増える可能性がある」ということを認識する必要があります。

しかしながら空売りを正しく使うことができれば、有効な投資戦略といえます。ヘッジ取引や弱気相場でも利益を得られる「空売り」を基礎から学びなおし、新たな投資キャリアへの第一歩を踏み出してみてはいかがでしょうか。

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