【空売り戦略の教科書⑭】クロス取引(つなぎ売り)とは?
クロス取引とは「売り」と「買い」を同じタイミングで発注し、約定させる取引です。
個人投資家がクロス取引を行う主な目的として、株主優待を低いリスクで獲得するためや節税対策として活用する場合があります。
株価が1,000円のときに「買い」と「売り」を同じ数量を同タイミング入れた時を例にして考えます。1日後、株価が1,100円になった場合「買い」の注文分は+100の利益、「売り」の注文分は-100の損失となります。2日後、株価が900円になった場合「買い」の注文分は-100の損失、「売り」の注文分は+100の利益となります。
このようにクロス取引では、どんなに株価が上がろうとも下がろうとも買い・売りのお互いの損益が相殺されてゼロになる状態を保つことができます。
株は保有している状態となるため、低リスクで株主優待を確保できるというテクニックとして主に利用されている取引手法です。
クロス取引の実例
具体例から、クロス取引のイメージを掴んでいきましょう。
リスクを抑えて株主優待をゲットする
株主優待をもらう為に株を保有するときは、株価の下落というリスクがあります。
5,000円分のお食事券を狙って商品を買ったとしても、株価が下落して6,000円の損失が出ることは十分にありえます。株主優待でもらえる金額よりも株価の値動きによる損失の方が遥かに大きいからです。そこで、この株価下落のリスクをなくす方法こそがクロス取引になります。
クロス取引で株主優待をもらうための具体的な手順を説明します。
- 証券会社の口座を開設する
- 株主優待を選ぶ
- 売り注文と買い注文を同時に入れる
- 権利確定日が過ぎたら現渡をする
1.証券口座を開設する
まずは証券口座を開設することが、スタート地点となります。また、通常の証券口座とは別に、信用取引口座(マージンアカウント)も同時に開設しておきましょう。
2.株主優待を選ぶ
証券会社の株主優待ページを閲覧して、手に入れたいと思えるような株主優待を選びます。
3.売り注文と買い注文を同時に入れる
選んだ銘柄に対して、「現物買い」注文と「一般信用売り」注文を同時に発注し約定させます。
注意点としては、「売り」と「買い」を同一株数を同時に、約定させる必要があります。可能であれば株価の値動きがない取引時間外に注文を入れておくことが大切です。もし取引時間内で注文をする場合は、引け注文(引成)などを用いて、同時に約定させるようにしてください。
4.権利確定日が過ぎたら現渡をする
売りと買いの両方のポジションを持っている状態で、権利確定日を過ぎたら現渡(品渡)をします。現渡とは、信用売りと現物株を相殺することを言います。現渡は一般的に、手数料無料です。現渡を行うことで売買手数料を抑えることができます。
以上が具体的なクロス取引を用いて、株主優待をローリスクで手に入れる方法です。(※ただし、取引したい銘柄が信用取引で売建できる銘柄である必要があります。)
クロス取引のメリット・デメリット
メリット:株価下落の損失リスクがゼロ
クロス取引では、「信用売り」と「現物買い」を同時に、同価格で約定させるため、株の売買で損をするリスクがないことが最大のメリットといえます。
これにより株価の変動を意識せず、損失リスクをゼロにして株式優待を手に入れることが可能となります。
デメリット:取引手数料がかかる
株主優待で得られる利益を、手数料が上回らないようにしましょう。現物「買い」と信用「売り」を注文するには、取引手数料と貸株料を証券会社へ支払う必要があります。それ以外にも逆日歩(ぎゃくひぶ)という手数料がかかる場合もあることも心得ておきましょう。
500円のお食事優待券を貰う為に、取引手数料1,000円となってしまったら、総合的に損することになります。株主優待を選ぶ際に、コストと優待の価値が見合うかどうか事前に計算するようにしておきましょう。
まとめ
クロス取引とは、株を「買う」注文と「売る」注文を同時に入れることです。「売り」「買い」のお互いの損失を相殺し、株価下落による損失リスクをゼロにすることで、株主優待を獲得することや節税対策として利用される取引手法です。
ただし、株の売買手数料や貸株料といった手数料は発生するので、株式優待をタダでゲットできるワケではないことを注意してください。
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